研究概要 |
1.腎糸球体基底膜障害とIV型コラーゲン 遺伝子変異について 基底膜障害を主病変とする遺伝性腎炎には、アルポート症候群と菲薄基底膜病などがあり、前者ではIV型コラーゲンα3,α4,α5鎖の3つの病因遺伝子が報告されている。私達はアルポート症候群患者のゲノムDNAサザンブロット法で解析し、α5鎖遺伝子の3′側が10Kbにわたって欠失している症例と、α5鎖遺伝子がほぼ全域にわたって欠失している症例を見いだし報告した。また、α3鎖とα5鎖にはalternative splicingが存在し、このalternative splicing産物mRNAが翻訳されて異常なIV型コラーゲン蛋白となり、糸球体基底膜の障害に関与している可能性についても報告した。 菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の病因遺伝子は不明であるが、本症は常染色体優性遺伝であることから、IV型コラーゲンα3鎖,α4鎖遺伝子が責任遺伝子である可能性が考えられる。そのため私達はα3鎖,α4鎖遺伝子領域と本症の連鎖解析を試みた。しかし現在までに得られたrod scoreでは、連鎖していないという結論であった。 2.ラット実験糸球体腎炎と基底膜障害の関連 単クローン抗体1-22-3の投与によるラットメサンギウム増殖性糸球体腎炎と、基底膜障害が高度であるラット馬杉腎炎を惹起し、各種の解析を行った。まず、前者では単離糸球体mRNA発現をRT-PCR法で解析し、メサンギウム細胞の増殖時期と蛋白尿の出現に一致して、癌原遺伝子c-mycの発現が増強していることを見出した。このモデルでの蛋白尿は、基底膜障害と関連している可能性があり、c-myc発現と基底膜障害の関連について報告した。また、後者では単離糸球体mRNA発現をノーザンブロット法で解析し、TGF-βmRNA発現が増強していることを見出した。さらにTGF-β阻害薬であるデコリンの投与を行い、デコリンによってTGF-βmRNA発現が抑制されていることを見出し、これについても報告した。
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