研究概要 |
1.強力な血管収縮ペプチドであるエンドセリン(ET)-1の昇圧量を全身的に投与しても,腎微小循環の調節に中心的な役割を果たしている尿細管系球体フィードバックの反応性に明らかな変化はみられない.これは腎局所でETに拮抗する血管拡張因子の放出があり,ETの腎作用が修飾されることによる可能性が考えられる.そこで今回の研究では,ETの腎作用に対して,内因性の内皮由来血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)がどのように影響しているのかを検討した. 2.ネンブタール麻酔下のSprague-Dawley系ラット(体重220-300g)を用い,NO合成酵素拮抗阻害薬,N^G-nitro-L-arginine(NLA)を投与し,腎微小穿刺実験を施行した.人工尿細管液を用いてHenle係蹄を順行性に40nl/minで微小潅流しつつ,近位尿細管の最近位部で尿細管液を採取し,この液流量(early proximalflow rate,EPFR)の変化により尿細管糸球体フィードバックの反応性を評価した. 3.NLAの非昇圧量(2.0μg/kg/min)の90分間持続静注では,腎血管抵抗,腎血漿流量,糸球体濾過値に変化はみられなかった.ただし,尿中Na排泄量は138±50から312±178nEq/minへと増加した. 4.Henle係蹄微小潅流実験では,NLA投与前には,40nl/minの係蹄潅流によりEPFRは31.3±1.8から17.3±12.1nl/minへと減少し,正常なフィードバック反応が観察された. 5.NLAの非昇圧量を投与して係蹄を40nl/minで潅流すると,EPFRは31.1±1.8から6.7±0.8nl/minへと著明に減少し,フィードバック反応の明らかな亢進がみられた. 6.内因性の内皮由来血管弛緩因子であるNOの合成を阻害した状態では,尿細管糸球体フィードバックによる輸入細動脈の収縮反応が亢進するものと考えられる.
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