研究概要 |
糸球体硬化におけるメサンギウム細胞の形質変換に関する研究として平成5年度において以下の成果を得た。 1.培養メサンギウム細胞を用いた検討 各種の収縮関連蛋白のアイソフォームを指標として培養メサンギウムにおける形質変換を検討した。ミオシン重鎖にはSM1,SM2,胎児型のSMembの3種アイソフォームが存在するが,正常糸球体においてはいずれのアイソフォームも存在しない。培養メサンギウム細胞においてはSMembの発現とカルデスモン、トロポミオシン等の収縮蛋白の発現を認めた。この内、動脈硬化巣血管平滑筋にも出現する、SMembに注目してその発現調節機構を検討した。SMembは培養継代数を経るにしたがい、その発現量が増加した。また増殖因子であるTGF_<-β>,PDGF刺激により増加した。 2.糸球体硬化モデルにおける検討 進行性糸球体硬化モデルである部分腎摘ラットにおいて,糸球体硬化の進展とともに、メサンギウム細胞におけるSMembの発現増加を,蛋白レベルとmRNAレベルで認めた。カルデスモン、トロポミオシン等の収縮蛋白も進行性に増加していた。また正常糸球体では認められない間質型コラーゲンのメサンギウム領域での増加を認めた。SMembは比較的早期(1週間)より出現しており,同モデルにおける早期からのメサンギウム細胞の形質変化を示していた。糸球体内でのTGF_<-β>やPDGFの発現増加も認めており,培養細胞における実験結果よりこれら増殖因子のメサンギウム細胞形質変換への関与が考えられる。 以上より糸球体硬化においてメサンギウム細胞の形質変換が生じている事、細胞内収縮蛋白のアイソフォーム変化、特にSMembの発現は糸球体硬化におけるメサンギウム細胞の形質変化の鋭敏で優れたマーカーである事が判明した。
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