研究概要 |
左腎に血管結紮により2/3に腎梗塞をおこし、右腎を摘出した高度腎摘出ラットでは糸球体肥大が観察されたが、左2/3腎梗塞後、右腎の尿管を腹腔内に解放した場合には同程度の残存腎機能を示しながら糸球体肥大は観察されなかった。Growth hormone欠損ラットに5/6腎摘出術を施行した場合には、糸球体肥大はあまり観察されなかった。そこで、高度腎摘出動物の血清中に糸球体肥大を促進する因子が存在する可能性を、培養メサンギウム細胞の細胞動態と言う観点から検討した。Wisterラットで高度腎摘出モデルを作成し、ラットの血清を亜分画して培養メサンギウムの増殖活性を検討した結果、分子量3000以下の分画に増殖活性を僅かに促進する因子が存在した。さらに、protein kinase Cを修飾したメサンギウム細胞を用いて増殖反応を検討したが、血清因子の特異性は認められなかった。メサンギウム細胞をcollagenのgelに包埋培養してgelの収縮を観察する方法でcell-matrix interactionを検討すると、FCSやTGF-βでgelの収縮は著しくなり、血清因子やサイトカインがgelの収縮に影響することが明らかとなった。高度腎摘出マウスの血清を添加した場合には、Sham operationのマウスの血清を添加した場合よりgelの収縮が著しく、cell-matrix interactionを変化させる何らかの因子が高度腎摘出動物の血清中に存在する事が明らかになった。nothern blot法で細胞外基質代謝を検討した結果、5%FCS加DMEMで培養したメサンギウム細胞では、IV型collagen、laminin,fibronection、およびTIMPの遺伝子発現を認めた。しかし、高度腎摘出マウスの血清を添加しても、これらの遺伝子発現に明らかな差は見いだせなかった。高度腎摘出動物の血清中に存在する細胞増殖能の差はserumstervationを7-10日行い得られたもので、この様な血清因子は基質代謝を大幅に変化させるものではないと考えられた。
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