研究概要 |
メサンギウム細胞でのFcα-receptor(FcαR) mRNAの発現は微量であるため、昨年検討したnorthern bloting法では同定が難しく、再現性にも問題があることが解った。そこでFcαRに特異的なプライマーを作成しRT-PCR法による同定を試みた。その結果、人培養メサンギウム細胞におけるFcαRの同定が可能となった。 次に、競合的RT-PCRの系を確率し、サイトカインによるFcαR mRNAの発現調節を再検討した。人培養メサンギウム細胞を用い、IL-1,IL-2,IL-6,INF-γ,を各々1ng/ml,10ng/mlおよび100ng/mlの濃度で培養上清に添加し24時間後のFcαR mRNAの発現を検討した。その結果、これらのサイトカインでは人培養メサンギウム細胞におけるFcαR mRNAの発現量には、明かな変化は見られなかった。 FcαRのDNA polymorphismの検討では、細胞外ドメインをコードする部位にSty1によるpolymorphismの存在が明かとなった。そこで、同部位の塩基配列を検討したところ、FcαR cDNAの670番塩基がシトシンからチミンへの点変異であることが同定された。しかし、合成されるアミノ酸はともにロイシンであり、FcαRの構造には影響のないsilent mutationであることが解った。 FcαRの細胞内ドメイン蛋白をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合蛋白として大腸菌に合成させ、精製後家兎に免疫し抗FcαR抗体を作成した。この抗体を用いて行った人培養メサンギウム細胞との免疫沈降反応では、約60KDの単一バンドを認め、分子量よりFcαR蛋白を考えられた。また、この抗体を用い間接蛍光抗体法による腎生検組織のFcαR染色を試みたが、明かな染色性は見られなかった。
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