[目的]従来の研究から、培養メサンギウム細胞(MC)のphenotypeは、周囲の三次元的な細胞外基質環境によって修飾されることが知られている。我々の研究グループは、MCの三次元基質ゲル内での増殖能に関して、fibronectinは促進的に、type IV collagen(C‐IV)、laminin、heparan sulfate proteoglycan(HSPG)は抑制的に働くことを既に報告した。そこで、糸球体障害の進展・増悪における糸球体内皮細胞(GEnC)の意義を明らかにするため、GEnCが産生した細胞外基質(ECM)が、糸球体硬化と密接に関係するMCの増殖をいかに調節・制御するかについて、両者の培養細胞を用いて検討した。 [方法]1)confluentに達したGEnCおよびMCを、それぞれ0.02M NH_4OHで処理することにより、細胞成分を溶解・除去し、GEnCおよびMCが産生したECM[それぞれE/ECMおよびM/ECMと略す]のみが付着したdishを作成し、この上に同一のMCを一定の密度で蒔き、その後の増殖能を経時的な細胞数測定により検討した。2)無刺激のGEnCが産生したECM[E/ECM]に加えて、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)(captopril 10〜500mug/ml)による刺激を受けたGEnCが産生したECM(ACEI+E/ECM)上でMCを培養した場合に、MCの増殖活性いかに変化するかについて検討した。3)ACEIによるGEnCのECM代謝への影響をノーザン・ブロット法にて検討した。 [結果]1)MCのculture substrateへの付着数は、ACEI+E/ECM上ではE/ECM上に比し、約20%増加した。2)ACEI+E/ECM上では、E/ECM上に比し15〜20%程度の有意なMCの増殖抑制が認められた。3)captopril 10〜500mug/mlの刺激により、GEnCのC‐IVおよびHSPGのmRNAレベルは非刺激時の2〜3倍に増加した。 [結論]GEnCによって産生されるECMが、MCの増殖を調節・制御している可能性が示唆された。またACEIはこのGEnCの基底膜型ECMの遺伝子発現を増強させることにより、GEnCとMCのcell‐cell communicationに関与している可能性が考えられた。
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