平成5年度の研究において、Dahl食塩感受性ラットにタウリンを投与したところ内因性カリクレイン・キニン系を活性化し降圧効果を発揮する可能性が示唆された。そこでカリクレイン・キニン系の活性低下が成因の一つと考えられている本態性高血圧症の治療薬として応用できるか否か、入院中の本熊性高血圧症患者に標準食(食塩7g/日)摂取下でタウリンを6g/日、1週間投与し、投与前後で血圧、尿量、および下記パラメーターを測定した。 血液;電解質、尿素窒素、クレアチニン、血漿レニン活性(PRA)、アルドステロン濃度(PAC)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP) 尿;電解質、尿素窒素、クレアチニン、カテコラミンとカリクレイン排泄量、カリクレイン活性はウシ低分子キニノーゲンを基質として産生されたキニンをラジオイムノアッセイで測定した。(1単位=1μgキニン/ml/gクレアチニン) 結果 未だ症例数が少なく、統計学的解析を行うに至っていない。現在も研究を続行中であり、その症例の一部を個々に提示する。 第1例(64歳、女性) 尿中カリクレイン排泄量は投与前251.8単位から、投与7日間の平均294.5単位へと上昇傾向を認め、尿中Na排泄量も53.4mEq/gクレアチニンから投与中の平均95.1mEq/gと増加した。 第2例(76歳、男性) 尿中カリクレイン排泄量は投与前99.1単位から、投与7日間の平均150.2単位へと上昇し、尿中Na排泄量も78.9mEq/gクレアチニンから投与中の平均96.1mEq/gと増加した。また、本例ではPRA、PACが上昇、心房性ナトリウム利尿ペプチドが低下し、循環血漿量の低下を示唆した。 このようにタウリンがNa利尿をもたらすことが示唆されたが、両症例とも血圧の変化は明らかでなかった。その理由として、タウリンの降圧効果はサイアザイド系利尿薬のように緩徐に発現することが考えられる。
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