1.血中IGF-II測定法の確立と経時的変化 Insulin like growth factor II(IGF-II)の測定には結合蛋白が影響するため、抽出方法を工夫することによりその影響をなくす努力がなされてきた。研究者らは山羊胎仔の血漿を蟻酸・アセトンにより抽出し、その希釈曲線とhuman recombinant IGF-IIにより作成した標準曲線とを比較したところ、ほぼ平行化していることが確認されたため、本法による測定でほぼ満足できると考えられた。この方法により胎齢120日の妊娠山羊より帝王切開にて娩出した胎仔を膜型人工肺による体外循環下に水中保育し、経時的にIGF-IIを測定した。その結果、出生時301.1ng/mlであったものが2.5時間、10時間、24時間、40時間と経過する毎に254.4、163.2、138.4、123.2ng/mlと急速に低下していった。母体血では189.0ng/mlと胎仔より低値をとった。このように胎仔のIGF-IIが出生後急速に低下する機序については不明である。 2.成熟度のマーカーとしての肺サーファクタントの測定 成熟度の評価のために肺におけるサーファクタント合成を羊水中でサーファクタント特異アポ蛋白であるSP-Aを指標として測定した。その結果胎齢120日の時点では未だ極微量しか検出できず、肺としては機能的な成熟は認められていないと考えられた。 今後実験例数を重ね、IGF-Iなど他の成長因子の動態とともにIGF-IIが胎仔発育に及ぼす影響を中心に検討する予定である。
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