1.血中IGF-II測定法の確立と山羊胎仔血中IGF-I及びIGF-IIの経時的変化 Insulin like growth factorII(IGF-II)の測定上、結合蛋白の影響を除去するため、山羊胎仔の血漿を蟻酸・アセトン抽出し、その希釈曲線と標準曲線を比較したところ、満足できる結果を得た。超未熟児モデルとして山羊胎仔を模型人工肺による体外循環下に水中保育し、本法を用いて経時的にIGF-I、IGF-IIを測定することにより、超未熟児の成長・発育におけるこれらの成長因子の役割について検討した。IGF-Iは出生時に低く、その後徐々に増加したが、IGF-IIは逆に出生時には高値をとるが、次第に減少した。従って、IGF-IIは胎内での発育に、IGF-Iは出生後の児の発育に重要な役割を持っていることが示唆された。 2.成熟度のマーカーとしての肺サーファクタントの測定 肺サーファクタントを指標として、出生時の肺の成熟度(羊水L/S比、サーファクタント特異アポ蛋白SP-A)、水中保育による成熟度の変化(肺胞水L/S比、リン脂質)を評価した。羊水のL/S比は、胎齢110〜130日ではレシチンの濃度が非常に低くまたサーファクタント特異アポ蛋白SP-Aも低値で、正確な評価が困難であったが、肺胞水のL/S比は、胎齢124日の山羊では60〜70時間保育後に急速に増加した。 3.ヒト超未熟児の胎内及び生後の血中IGF-IIの変化 ヒト超未熟児の臍帯血と出生後の血中IGF-IIの変化を受胎後週数に換算して比較すると、臍帯血の方が同じ受胎後週数の出生後の値より有意に高値をとった。従って、この血中IGF-II値の差が超未熟児の出生後の身体発育が子宮内胎児発育に劣っている一因であると考えられた。 以上より、出生後にIGFIIを誘導することによって超未熟児の発育を促進できる可能性が推測された。
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