研究課題/領域番号 |
05670980
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐久間 まこと 北海道大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70170636)
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研究分担者 |
松居 喜郎 北海道大学, 医学部, 助手 (90219379)
安田 慶秀 北海道大学, 医学部・附属病院, 教授 (60125359)
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キーワード | 人工血管(Vascular graft) / 抗血栓(anti-thrombogenecity) / 血液適合(hemocompativity) / 血行再建(arterial reconstruction) / ePTFE |
研究概要 |
小口径人工血管の移植早期から遠隔期における血液適合性と抗血栓性獲得に関与する因子を探る目的で、新しい生化学的内面処理を行った小口径人工血管の移植実験を行い、人工血管内面に移植後形成される蛋白膜構造と人工血管内面へ集積する血小板の動態について検討した。平成5年度はゲラチン、コラーゲン、ヘパリン分子によって修飾加工処理された口径3mmのePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)人工血管を雑種成犬8頭の頚動脈および大腿動脈に移植して、移植後早期に人工血管内面に形成される蛋白膜の形成状態と組成、および内面に付着する血小板動態の測定を行った。修飾処理した人工血管内面には、移植直後より血小板の集積とFibrinを主体とした蛋白膜が形成された。人工血管内面に集積する血小板数は、蛋白膜形成とともに経時的に低下し、移植後1週における集積率は移植直後と比較して1/10程度に低下することがIn-oxinシンチグラムで確認された。これは蛋白膜のFibrinが血液接触面で形成されると同時に線溶をうけ溶解するため、血小板集積が阻止され、抗血栓性を発揮するものと考えられた。移植早期に発現するFibrin薄膜のきわめて強い抗血栓性が確認された。この蛋白膜形成に影響を与える因子として、修飾材料の検討では、コラーゲンが均一でかつ薄い蛋白膜形成に促進的に作用することが観察された。ヘパリン分子は移植直後の内面への血小板集積を抑制するものの、Fibrin膜形成に関しては修飾処理を行わない人工血管と有意差はなく、移植直後の抗血栓性向上に寄与するのみであった。修飾加工による蛋白膜制御が、小口径人工血管の早期開存率向上のキーポイントとなる可能性が示唆された。
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