研究概要 |
[目的]X線照射済血液の使用ガイドライン作成を目的とし、照射後長期間保存による安全性、有効性を明らかにする。さらに採血後保存期間毎の至適X線線量とその際の許容保存日数を明らかにする。 [方法]in vitroで採血直後の新鮮血にX線照射装置を用い5Gy,15Gyの線量を照射した。これら血液より経時的に検体を採取し、以下の項目につき検索した。検索項目:リンパ球活性(リンパ球混合培養試験;MLC、リンパ球幼若化試験;PHA及びCon-A刺激)、赤血球への影響(赤血球膜抵抗、2,3-DPG量、血球数)、溶血度(血漿ヘモグロビン(Hb)値)、生化学検査(電解質など)。 [成績]採血直後の新鮮血15GyX線照射群で、MLCでの^3H-thymidine取り込みは非照射の対照群の12424cpmに比し直後で918cpm(7%)と減少した。リンパ球幼若化試験のPHA刺激では15GyX線照射で22310cpmと対照群の30%、ConAでも18058cpmと対照群の35%とリンパ球活性は低下し、これは照射後保存によりさらに減少した。赤血球膜抵抗、2,3-DPG量の照射後の経時的変化は非照射の対照群と差はないが、血漿K値は照射後7日後23mEq/lと対照の14mEq/lに比し有意に増加しており、照射14、21日後ではその差は増大した。血漿Hb値も有意差はないが照射群で増加傾向が大きかった。今後は、保存7、14、21日後の血液に同様にX線照射を行い同様の検索で至適X線線量および許容保存日数を明らかにする必要がある。 [まとめ]15Gy照射済の新鮮血は血漿K値に注意すれば本来の有効期限内の使用は可能である。保存7日以上の血液に関しては低線量で充分なリンパ球不活化が得られる可能性もある。照射済未使用血液は使用されず廃棄されていたが、今後の研究成績により照射済血液の有効利用が期待できる。
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