本研究の目的は、狭窄部血管の粘弾性特性を測定しながらリアルタイムで最適な拡張条件を計算し最も効果的にしかも安全に拡張が行えるように動作するcomputer制御の血管拡張システムを開発するというものです。 平成5年度には以下のような研究実績をあげました。 1 冠動脈血管の粘弾性特性の測定システムの構築。血管の原形を保ったまま粘弾性を測定するためのシステムを構築しました。これは0.5mlのガスタイトシリンジをステッピングモーターで駆動するシリンジ駆動部分と、最高10気圧までの高圧測定システムからなっています。これらはともにマイクロコンピューターによって制御され測定値もA/Dコンバーターを介して計算機に入力されるようにしました。圧測定バルーンは実際に臨床で使用されている拡張バルーンを用いました。 2 粘弾性測定のアルゴリズムの制作 拡張の対象である冠動脈の外径はヒトでは2.5-3.5mm程度であり、拡張バルーンの容量は大きなものでも0.3ml以下です。このため測定系内部の液体の粘性抵抗が極めて大きく、バルーンを拡張する間の測定圧は実際のバルーン内圧を反映しません。従ってバルーンを最大に拡張させるだけの液量を連続的に注入するのでは正確な測定ができないことになります。これを解決するため、拡張に必要な注入総量の1/10をステップ状に注入し、圧が安定化するのを待つランプ状の注入方式を採用しました。まずバルーン自体がもつ粘弾性特性を十分に解析する必要がありこれを行いました。これを基礎に冠動脈(標本)の粘弾性を注入量、バルーン内圧、バルーンの外径から算出するアルゴリズムを現在検討中です。これをブタの摘出心臓の冠動脈を用いて実際の測定を通じて行っています。
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