研究課題/領域番号 |
05670991
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 英昭 東京大学, 医学部(病), 助教授 (30134555)
|
研究分担者 |
井上 知巳 東京大学, 医学部(病), 医員
深柄 和彦 東京大学, 医学部(病), 医員 (70323590)
鈴木 公孝 東京大学, 医学部(病), 助手 (60221321)
福島 亮治 東京大学, 医学部(病), 助手 (50228897)
|
キーワード | 経腸栄養法 / 経静脈栄養法 / サイトカイン / 腹腔内滲出細胞 / 細菌クリアランス / TNF / 局所免疫能 |
研究概要 |
腸管が消化吸収のみならず代謝や免疫を担う重要臓器であることが最近認識されつつある。我々は外科侵襲前の腸管使用の有無が侵襲後の生体免疫反応に及ぼす影響を実験的に検討した。 【対象と方法】ウイスター系雄性ラットに胃瘻または頸静脈カテーテルを挿入し、同一組成の完全経静脈栄養(TPN)または完全経腸栄養(TEN)で7日間管理した。その後一定量の大腸菌を腹腔内投与し、2時間後の腹腔内残存細菌数(CFU)、腹腔内滲出細胞(PEC)数、腹腔洗浄液中TNF濃度、血中TNF濃度、PECのTNF産生能を測定した。 【結果】CFUはTPN群で63±18、TEN群で9.5±3.1(x10^6)でTPN群の方が有意に多数の菌が生存していた。それに対して、PECはTPN群で2.6±1.1、TEN群で13.0±3.3(x10^6)、また腹腔TNF濃度はTPN群で25.0±14.9、TEN群で53.0±22.9(x10^2u/ml)、さらにPECのTNF産生能もTPN群で4.5±2.1、TEN群で11.4±0.6といずれもTEN群の方が高値だった。また、全身血中TNF濃度はTEN群で603.1±434.1、TEN群で175.4±93.2(x10^2u/ml)と腹腔とは逆にTPN群の方が高値だった。以上より、TEN栄養管理はTPNに対して大腸菌腹膜炎時の腹腔への滲出細胞数が多く腹腔TNF濃度も高くなり、その結果局所の細菌クリアランス能が高まり、TPNに対し腹腔内細菌数が有意に少なくなると考えられた。また、TENは全身の過剰なTNF産生を抑制することも分かった。 【結語】術前経腸栄養法は経静脈栄養法に比べて、腹膜炎に対する局所免疫能を高め、かつ全身の過剰なサイトカイン反応を抑制し、生体に有益であると考えられた。
|