研究概要 |
急性肝不全に対する補助療法としてのハイブリット型人工肝臓あるいは代用肝臓の開発を目的として,本年度は脾内へ移植されたラット遊離肝細胞の増殖程度と初代培養肝細胞を用いた増殖活性に及ぼす影響などを中心に検討した。 1)ラットを用いた検討:(1)ラット肝組織を凍結融解処理後,その一部を大腿部皮下移植すると,宿主血清中に肝細胞増殖因子(HGF)様物質の誘導が可能であった。(2)ラット遊離肝細胞を脾内移植し,この凍結融解処理血清(凍融血清)投与後,HEあるいはPAS染色して脾内移植肝細胞の増殖程度を観察すると,感作後14日目の凍融血清投与時が最も優れていた。(3)ラット初代培養肝細胞を用いた^3H-thymidine取り込み量は,感作後14日目凍融血清添加時が最も高値を示した。凍融血清はEGF,insulin,dexam-ethazoneなどの他の増殖因子とほぼ同程度か,それ以上の取り込み量を示した。(4)凍融血清をMono Qカラムで分画し,最も高い増殖能を示した分画の電気泳動をHGFのそれと比較検討するとHGFとは異なった分子量分布を示し,別の増殖因子である可能性が示唆された。2)凍融血清添加時の肝細胞増殖における影響を検索する目的で,本年度は先ずHGFの影響を細胞内シグナル伝達とCa oscillationから検索した:(1)正常肝細胞ではHGF刺激により細胞内Caが一過性に上昇し,これに引き続くCa oscillationが観察された。(2)四塩化炭素(CCl_4)やKCNとIAAを用いたchemical hypoxiaなどにより作製した肝細胞障害モデルでは,HGF刺激により細胞内Caの伝達が低下し,Ca oscillationへの移行は観察されなかった。
|