研究概要 |
急性肝不全に対する補助療法としてのハイブリット型人工肝臓あるいは代用肝臓の開発を目的として,本年度はラット遊離初代培養肝細胞を用いた増殖機構の解析と脾内移植されたラット肝細胞の増殖程度及び大網内への再移植を中心に検討した。 1)初代培養肝細胞での検討 (1)凍結融解処理ラット肝組織を大腿部皮下に移植し誘導した当教室開発HGF様因子をMono-Qにて部分精製したところ,分子量約140kDaと20kDaの部分に増殖活性が認められた.140kDaのものはHGFと考えられ,20kDaのものは別の増殖因子と考えられた.(2)肝細胞増殖機構の解析についてはHGFによる細胞内シグナル伝達より検討した.HGF刺激により,protein tyrosine kinase(PTK)が活性化され,続いてPLCγのリン酸化,1,2-diacylgrycerolの産生とCa^<2+>oscillationが観察された.また,PKC→MAP kinase→ PLA2→ arachidonic acid release→ prostaglandins→DNA synthesisというシグナルが肝再生に重要な役割を果していることを認めた.(3)肝細胞培養法に関しては現在血漿包理法を用い,3次元培養を行ない,肝細胞の形態学的変化及び長期間の機能維持について検討中である. 2)ラットを用いた検討 (1)ラット遊離肝細胞を脾内移植し当教室開発HGF様因子を腹腔内投与後,脾内肝細胞増殖程度を経時的にPCNA及びPAS染色にて観察した.control郡に比しHGF様因子投与郡は有意に増殖し,この増殖程度は投与回数に依存した.(2)現在,脾内で増殖せしめた肝細胞を1mm^3角に細切後大網内に再移植し,その生着及び増殖程度をPAS染色後画像解析して検討中であり,また,代用肝としての機能面については,CCl_4を用いた肝不全モデルラットにて血清学的及び生存日数から検討中である.
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