研究概要 |
ヒト癌の転移モデルとして,同所移植法によりこれまで6系のヒト大腸癌の肝転移モデルの作製に成功した.転移率は33-88%であり,安定した肝転移が認められ、消化器癌の転移の治療実験をおこなうモデルとして最適と思われる。 さらにこれら大腸癌株の肝転移率と癌関連遺伝子の関連を明らかにし、P53の変異と転移率とが関連することを見いだした。すなわち高率に肝転移をおこす大腸癌では原発巣のp53の変異が起きており、腫瘍の転移能とp53の変異との関連が示唆された。さらにPCR-SSCP法によりこれら大腸癌株のp53の変異点の同定を試み3系に関して変異点が同定された。 これら変異点に対して相補的Oligonucleotideの作製を試みたが、種々の問題があり有効なOligonucleotideの作製は困難と判明した。そこでWild Typeのp53をそのまま封入することを考え,Wild type P53発現プラスミドの作製を試みている。 また担体としてのリポソームに関しては、大腸癌肝転移に対して腫瘍移行性向上のために当初はCEAに対する抗体をリポソームに結合することを考えていたが,最近臨床でのマウス抗体投与における抗マウス抗体の出現が問題となってきた。そこで臨床使用可能で抗原性のないglycogen修飾リポソームを作製し体内分布等について検討した。その結果肝移行性が非修飾リポソームに比較して有意に良好であった(投稿準備中)。また上記肝転移モデルに対する効果を検討したが,抗癌剤封入リポソームによる抗腫瘍効果の検討では,有意な肝転移阻止効果を認めた(投稿準備中)。 このリポソームはp53を封入するリポソームとして最適と思われるためCEA結合リポソームにかえて本研究において担体として使用する予定である。
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