研究概要 |
1当科で切除した大腸癌の肝転移巣をヌードマウスの盲腸に縫着することにより同所移植を試み転移率が83%から38%まで種々の転移能を有する大腸癌株、TK-3,-4,-6,-9,-10,-13が樹立された。この6系中2系にp53の異常が認められた。TK-4は点変異を,TK-13は欠失を認めた。自然肝転移モデルの作製はFidler等の報告以来、ヒト癌の実際の転移をよく反映するモデルとして注目され、多くの発表がみられる。しかし実際の樹立、維持は困難であった。われわれは大腸癌の原発巣からではなく肝転移巣を用いて系を樹立し自然肝転移を試みたところ安定したモデルが樹立された。現在TKシリーズとしてさらにchara terizationをすすめている。2肝臓への封入遺伝子の移行性を向上させるために肝指向性liposomeを作製した。この肝指向性liposomeにadriamycinを封入したADM封入肝指向性liposome(hLip-ADM)はcLip-ADM(対照liposome),Free ADMに比較し有意に高い肝臓内ADM濃度を示した。またTK-4の同所移植肝転移モデルに対し対照群では85.7%の肝転移が認められたがcLip-ADM投与群では42.9%と半減し、hLip-ADM投与群では全く肝転移を認めなかった。このことは遺伝子を用いた肝臓を標的とするtargeting therapyにおいて極めて本研究で用いた肝指向性liposomeが極めて有効であることを示している。3諸家の研究結果およびわれわれのpreliminaryな結果からヒト型p53発現プラスミドを作製し、これをliposomeに封入することとした。ベクターとしてpRC/CMVを用いてヒト型p53発現プラスミドを作製するに成功したが時間的な制約のため今回の報告ではヒト型p53発現プラスミド封入肝指向性liposomeの抗腫瘍効果の結果を示すに至っていない。今後ヒト型p53発現プラスミド封入肝指向性liposomeを用いて、これらのcell lineや大腸癌株を用いたin vivo、in vitroの腫瘍増殖抑制実験、肝転移抑制実験をおこなう予定である。
|