研究概要 |
1.HLA-DQ抗原と腎移植成績 DQ抗原の腎移植における意義は現在までほとんど不明である。今回retrospectiveに腎移植後患者とそのドナーについて、一昨年来報告してきたDNAタイピングを用いたHLA-DQ抗原の同定を行い、移植成績との相関を検討した。対象としてHLA-onehaplotype適合生体腎移植を選び、その中でHLA-DR, DPが完全に一致し、DQ抗原のみ不一致である組み合わせを探すことによってHLA-DQ抗原適合性の意義を明確にできるという仮説をたてた。その結果、このようなHLA-DQのみが偶然一致している症例が11例(17%)に見られ、その中6例は2年以内に移植腎は廃絶しており、2年生着率は45%の低値であった。この生着率は有意の差をもってHLA-DQ1ミスマッチ例よりも不良であった。しかし、2年以降の廃絶は見られない。従って、DQ抗原が適合している組み合わせでは、移植後早期に移植腎が拒絶される確率が高いが、その時期を乗り越えれば長期の予後は良好である。この事実は移植後早期の免疫不応答性導入におけるドナーDQ抗原認識の重要性を示唆し、引いてはDQ抗原の役割として免疫抑制性細胞あるいは因子の活性化機能が推測させる結果である。 2.HLAクラスI抗原におけるDNAタイピング法の確立 HLAクラスI抗原のDNAタイピングは種々の技術的困難さがあるが、HLA-A抗原系に関してはほぼ満足できるプライマーの作成に成功し、retrospectiveに腎移植患者におけるHLA-A抗原抗原の見直しを終了した。
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