外科侵襲時に生じる生態防御反応においては急性相反応物質の主たる誘導因子であるIL-6が重要な役割を果たしている。侵襲時には例外なく高IL-6血症がおき、IL-6レセプターを介して細胞内に情報伝達が行なわれる。最近、血中に存在する可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)が報告された。このsIL-6RはIL-6量を調節していると解されるが、その変動、IL-6値との関連性、由来臓器については全く不明である。平成5年度では食道癌および胃癌手術患者の血液、ドレーン液の検討により以下の知見が得られた。 (1)血中IL-6値は術後早期に増加し(1日目に最高値)以後減少した。一方、血中sIL-6Rは術後減少しIL-6値の最高値とほぼ同時期に最低値をとり以後増加し、術前値に復した。この結果は生体防御として高IL-6血症という反応と手術早期におけるsIL-6Rのdown-regulationあるいはconsumptionという機構の存在を示唆している。 (2)ドレーン液中のIL-6値は血中のIL-6値に比し極めて高い値(約100倍)を示した。一方、sIL-6R値は血中、ドレーン液中ともに同濃度であった。このことよりIL-6は手術局所で主に産生され、ほぼ同時に血中に流入すると考えられる。しかしsIL-6Rは手術局所に集合する細胞から主にsheddingされるものでないことを示唆している。
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