消化器発癌の実験的研究において、一定量の低濃度の化学発癌剤の投潰傷は100%の動物に癌が発生するわけではない。そこで胃発癌過程を胃潰傷発生と置き換えるという仮説を立ててみた。攻撃因子としては化学発癌剤であり、一方、防御因子として胃粘膜の防御に影響を与える因子が存在し、胃粘膜が化学発癌剤に暴露されることを保護しており、その強弱が癌発生の個体差として示されるのではないかと仮説した。胃粘膜防御因子増強作用を有するRepamipideをN-Ethyl-N′-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)誘発マウス十二指腸発癌過程に投与し、腫瘍発生率を検討した。C57B1/6雄マウスにENNGを100mg/L投与し、同時にRebamipideを20or50mg/kgの濃度で混餌投与した。腫瘍発生率はENNG単独群では66.7%であったが、ENNG+20mgRebamipide群では58.1%、ENNG+50mgRebamipide群では45.2%と腫瘍発生率は低下したが有意の抑制ではなかった。ついで、RepamipideのN-methyl-N′-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)誘発ラット腺胃発癌過程への影響を検討した。Wistar雄ラットにMNNGを80mg/L投与し、Rebamipideを20mg/kg混餌投与し、腫瘍発生率を検討した。肉眼的腫瘍発生率はMNNG単独群では76.9%であったが、MNNG+Rebamipide群では61.5%と腫瘍発生率はRebamipide投与により低下したが有意の抑制ではなかった。しかし、組織学的にはCarcinomaとAdenomaの発生率はMNNG単独群では69.2%で、MNNG+Rebamipide群では30.7%とRebamipide投与により有意に(p<0.05)抑制した。また、MNNG投与によるラット腺胃粘膜のDNA損傷を8-OHGuaについて検討したが有意の上昇を認めず、Repamipideによる影響を検討することは出来なかった。
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