マンモグラフィで発見された非触知乳癌の増殖能の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05671031
• 研究機関: 聖マリアンナ医科大学
• 研究代表者: 福田 護 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (70059442)
• 研究分担者: 田所 衛 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80081644) ; 渡部 省二 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30113020) ; 有村 俊寛 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (70232072)
• キーワード: 乳癌 / 非触知 / c-erbB / p53 / カテプシンD

研究概要

[はじめに]非触知乳癌病変の増殖能を解析し、非触知乳癌の今後の治療方法の方向付けを行うため、細胞増殖遺伝子であるc-erbB-2、癌抑制遺伝子p53、非浸潤癌から浸潤癌の移行に関与する可能性のあるカテプシンDなどの増幅、過剰発現や異常を検討した。
[研究対象および方法]1989年1月以降、教室で発見された非触知乳癌22例(非浸潤癌が13例、浸潤癌が9例)を研究対象とした。また、同時期に非触知乳癌を疑ったが生検で良性であった症例の一部も対象とした。これらの症例のパラフイン標本から連続切片を作成した。c-erbB-2、p53、カテプシンDを免疫染色した。使用した抗体はc-erbB-2はニチレイ(polyclonal)、p53はDAKO(D0-7)、カテプシンDはDAKO(polyclonal)である。
今回、実際に検討したのは、良性病変4例、非浸潤性乳管癌10例、非浸潤性小葉癌1例、浸潤性乳管癌5例である。その他、乳癌症例ではあるが、癌組織が小さ過ぎたため癌組織は検索できず、周囲の非悪性部分のみを検索した症例が4例ある。
[結果]良性病変で免疫染色が陽性であったのは、c-erbB-2が0/4例、p53が1/4例、カテプシンDが4/4例であった。非浸潤性乳管癌症例で陽性であったのは、c-erbB-2が7/10例、p53が0/10例、カテプシンDが9/10例であった。非浸潤性小葉癌小例では、c-erbB-2が0/1例、p53が0/1例、カテプシンDが1/1例であった。浸潤性乳管癌で陽性であったのは、c-erbB-2が1/5例、p53が3/5例、カテプシンDが3/5例であった。癌組織周囲の非悪性部分のみを検索した症例で陽性であったのは、c-erbB-2が0/4例、p53が1/4例、カテプシンDが3/4例であった。
[考察および結語]非浸潤性乳管癌症例ではc-erbB-2の増幅があり、増殖能が高いことが示された。また、浸潤性乳管癌ではp53の増幅があり、癌抑制遺伝子の異常が示唆された。カテプシンDは特異的結果がでなかった。

研究成果

• [文献書誌] 福田 護 他: "乳癌の乳房温存療法" Sexual Science. 12(4). 23-28 (1993)
• [文献書誌] Takao Yokoe,Mamoru Fukuda,et al.: "Effect of mass screening for breast cancer from the aspect of psychosocial assessment of the quality of life" Jpn J Cancer Res. 84(4). 365-370 (1993)
• [文献書誌] 松本徹,福田護 他: "乳房X線撮影像の診断精度に関するprospective study-視触診との比較-" 日乳癌検診学会誌. 2(1). 43-52 (1993)
• [文献書誌] 松本徹,福田護 他: "乳房X線撮影像の診断精度に関するprospective study-読影者間変動の解析および前回実験結果との比較-" 日乳癌検診学会誌. 2(1). 53-61 (1993)
• [文献書誌] 有村俊寛,福田護 他: "葉状腫瘍19例における臨床病理学的検討" 日本臨床外科学会雑誌. 54(11). 2781-2789 (1993)
• [文献書誌] 福田 護 他: "局所進行乳癌・炎症性乳癌の治療" 臨床外科. 49(1). 89-95 (1994)
• [文献書誌] 福田護(分担): "乳腺疾患" 金原出版(泉雄勝,妹尾恒明編), 20 (1993)
• [文献書誌] 福田護(分担): "乳癌の手術" 南江堂(霞富士雄,植野映編), 14 (1993)