研究概要 |
1.肝細胞・肝非実質細胞の混合培養法の基礎的検討 肝細胞と肝非実質細胞の混合培養を目的に、肝非実質細胞の分離培養法を検討した。コラゲナーゼおよびプロナーゼを用いることにより肝非実質細胞の分離培養に成功したが、細胞収量が少なく、継代培養が困難であった。 非実質細胞の分離培養を繰り返すうちに、著明な増殖能を有する上皮様細胞が分離され、この上皮様細胞は明るい細胞質を持つ比較的大型の、肝細胞とは明らかに異なる細胞であった。この上皮様細胞はトリプシンを用いて継代培養が可能であり、著明に増殖させることができ、さらにDMSOおよびFCSを添加した培養液中で凍結保存することも可能であった。 また、この上皮様細胞は抗第VIII因子抗体を用いた免疫組織染色では染色されず、類洞内皮細胞・血管内皮細胞ではないことが判明し、現在この上皮様細胞を同定中であると同時に、肝細胞との混合培養を行い肝細胞に対する影響を検討中である。 2.各種酸素分圧下における至適肝細胞培養環境の検討 肝細胞は低酸素状態に弱いと一般に考えられているが、これを培養肝細胞で実際に検討した報告はみられず肝細胞機能を十分に発揮する至適条件を探る意味で、培養肝細胞を種々の酸素分圧条件下で培養した。 まず、マルチガスインキュベーター内で、培養液中の溶存酸素分圧が、インキュベーター内の酸素分圧と比例することを確認した。次に、10,20,40%の各種酸素分圧下で肝細胞を培養し、その形態を観察するとともに糖新生能・尿素合成能などの肝細胞機能を測定した。その結果、酸素濃度が20%で最も良好な形態および機能発現を認め、検討した酸素分圧の条件下では、空気相が初代肝細胞培養に最も適していると判断された。
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