研究概要 |
手術時に得られたヒト大腸癌の肝転移巣を免疫源として、細胞融合法にてモノクローナル抗体を作製した。大腸癌細胞培養株や大腸癌原発巣および、その肝転移巣との反応性を検討した結果、ヒト大腸癌肝転移巣と比較的高率に反応する2種類の抗体(324抗体、367抗体)を得た。何れの抗体も、これまでの検討では既知の抗原とは反応せず、flow cytometerを用いたconjugate formation assayにてヒト大腸癌細胞とヒト肝細胞の接着を阻害したことから、細胞接着に関連する未知の抗原を認識しているものと考えられた。癌細胞と肝との接着という、癌の肝転移形成機構の重要な部分に関与するものであり、肝転移関連モノクローナル抗体を樹立できたと考えている。 また、ヒト由来の大腸癌培養細胞株から教室で樹立した2種類の肝高転移細胞株(LS174T-LM,SW1116-LM)を、各々、免疫源として、同様に、細胞融合法にてモノクローナル抗体を作製した。現在、その反応特異性を検討中である。我々の最近の肝高転移細胞における表面抗原の解析では、肝転移巣形成にはCEAやsialyl Le^a,sialyl Le^x抗原などの細胞表面接着分子の発現増強が重要との知見を得ており、今回のモノクローナル抗体も細胞の接着に関連する抗体ではないかと推測している。 本年度の研究において、肝転移形成における大腸癌細胞表面の接着分子の重要性が明らかになった。
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