研究概要 |
前年度にヒト大腸癌肝転移巣を免疫源として得られたモノクロナール抗体が細胞接着に関連する抗体との結果を得たが、これが大腸癌の肝転移形成に普遍的に重要なものか否かを評価するため、本年度は、まず、我々が樹立した二種類の高肝転移ヒト大腸癌培養細胞株を免疫源として新たなモノクロナール抗体の作製を試みた。しかし、SCIDマウスに肝転移を繰り返して作製した高肝転移細胞とその親株との間で反応性が異なるモノクロナール抗体は、計6回の細胞融合操作を行っても得られなかった。このため、肝転移形成に関わる既知の細胞表面抗原の特徴を求める目的で、高肝転移細胞が高肝転移能を得る際の細胞表面抗原(接着分子、増殖因子受容体、糖鎖抗原)の経時的変化を、それらに対する市販の抗体を用いたflowcytometoryで測定した。その結果、高肝転移細胞になるにつれて、CEAやsialyl Le^a,sialyl Le^x,Le^x抗原など接着分子の有意な増加が認められた。増殖因子受容体や糖鎖抗原の量に変化はなかった。これより、前年度と同様に、肝転移に及ぼす細胞接着因子の重要性が再確認された。 原発巣における高肝転移細胞の同定や、その多寡と肝転移形成の関連、あるいは、モノクロナール抗体と制癌剤の複合体を用いた肝転移巣の治療は、今後の検討課題として残された。
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