研究概要 |
正常及び癌の培養細胞について、レーザー分光学的手法を用いて、各々の細胞構造の差異を解析することを目標とした。正常細胞として、線維芽細胞(NIH3T3細胞)を、癌細胞としては、前期のNIH3T3細胞に癌遺伝子を組み込んだ細胞(Ret ll,al-1)を用いて、それぞれの細胞について吸収スペクトル、及び発光スペクトルを測定した。昨年度までの研究成果として、可視・紫外領域における吸収・発光スペクトルについては、各々の細胞に特徴的なスペクトルは得られているが、正常及び癌細胞の間で明らかな差異が認められていなかった。また、赤外領域の吸収・発光スペクトルについては、フーリエ変換赤外分光器をもちいて解析することにより、細胞の分子構造レベルでの差異を検討することが可能なことから、本年度はこのレベルでの解析を重点的に行うことにした。培養細胞という生命体を分光学的に測定する手法はなく、生体に含まれる水分が誤差の原因となるため、正確な測定法を確立するのは困難である。我々は、測定誤差を最小限にするための簡便な手法の確立につとめ、各々の細胞株における特徴的なスペクトル曲線を得た。が、どうしても水分の誤差が避けられないスペクトル域が存在し、この領域における細胞間の吸収・発光スペクトルの差異を求めるのは困難である。水分の誤差を避けて測定可能な部分に関しては、細胞間に特徴的な差異は認められなかった。
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