研究課題/領域番号 |
05671046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 公孝 東京大学, 医学部(病), 助手 (60221321)
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研究分担者 |
樋口 芳樹 東京大学, 医学部(病), 医員
山形 誠一 東京大学, 医学部(病), 医員
篠崎 大 東京大学, 医学部(病), 医員
澤田 俊夫 東京大学, 医学部(病), 講師 (50143441)
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 癌 / dysplasia / K-ras / Two-step RFLP法 / P53 / ELISA法 / 大腸腺腫 |
研究概要 |
1.潰瘍性大腸炎の癌化にK-ras遺伝子codon12の点突然変異が関与するかを知る目的で、潰瘍性大腸炎癌化例6症例(6病巣)、dysplasia合併例3症例(6病巣)につきTwo-step RFLP法を用いて測定した。癌化例6病巣中、点突然変異陽性は1病巣(16.6%)のみであった。この病巣はvillous typeの1型の大腸癌であり、他の5病巣は潰瘍性大腸炎に特有の4型あるいは扁平隆起型の大腸癌であった。またdysplasia6病巣中1病巣(16.6%)に点突然変異が認められた。この1病巣はlow-grade dysplasiaであった。 2.大腸癌におけるK-ras codon12の点突然変異はTwo-step RFLP法では約70%(本研究データ)であることと比較すると、潰瘍性大腸炎の癌化に際してはK-ras codon12の点突然変異を介さない経路が考えられた。 3.一方、潰瘍性大腸炎を合併しない症例における腺腫でのK-ras遺伝子異常の出現率を形態別にみると、polypoid67%に対しflat23%であった。この結果からflatな発育を示す腺腫とpolypoid型の病変とでは分子生物学のレベルでの異なる経路が考えられた。 4.以上の結果から、潰瘍性大腸炎に合併する癌、dysplasiaの特徴的な形態であるflatな発育(plague-like lesion)とK-ras遺伝子異常の頻度が低率であることとの間に何らかの関係があるものと考えられた。 5.ELISA法及びWestern Blotting法にて、大腸腺腫におけるP53遺伝子の解析を行った。大腸腺腫では28例中26例と高率(93%)にWild-type P53蛋白の発現が証明された。今後この臨床的意義についてさらに症例を追加し検討するとともに、潰瘍性大腸炎に合併した癌、dysplasiaについても検討していきたい。
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