研究分担者 |
韓 一秀 東京大学, 医学部(病), 医員
井上 知己 東京大学, 医学部(病), 医員
二川 憲昭 東京大学, 医学部(病), 医員
新海 宏 東京大学, 医学部(病), 医員
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研究概要 |
我々は,重症急性膵炎の有効な治療をめざし,種々の薬剤を用いた実験的検討を行ってきた.本年度はtrypsinに対して阻害作用を有するurinary trypsin inhibitor(UTI)の膵障害抑制作用について検討した.ラットの還流膵モデルを作製し,膵をdextran70 ± UTIで還流した.タウロコール酸(1% wt/vol)を主膵管から注入,門脈回収液中の膵酵素の濃度を膵障害の指標とした.さらに還流後の膵を組織学的に画像解析装置を用いて検索した.その結果,UTIは回収液中の膵酵素濃度を低下せしめることはなかったが,組織学的に膵の実質壊死および間質の浮腫を,コントロール群に比較して有意に減少した. 以上の結果は,本実験における門脈回収液中の膵酵素濃度が膵の組織学的変化を必ずしも反映していないことを示している.急性膵炎における血中アミラーゼの増加は必ずしも膵炎の重症化の程度に反映されないことはよく知られている.還流膵を用いた実験を評価する際には,他の実験と組み合わせたり,あるいは還流後の膵組織を組織学的に検索することが重要であろう.また,今回の結果は,UTIがタウロコール酸による組織学的膵障害の程度を減ずることを示していると考えられた.
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