研究概要 |
(1)血管内超音波検査の施行手順:現在までの確立しえた術中の検査手順は,同検査の禁忌所見(悪性病変の著明な腹膜播種,易出血傾向の有る患者)がない状態で腸間膜の末梢静脈から門脈本幹へとprobeを挿入し,門脈と接するような病変(肛門部胆管癌,中部胆管癌,膵頭癌,進行胆嚢癌)の抽出を可能にした.しかし,以前からの課題(probeの難操作性)は通常の術超音波検査の併施によっても解決されなかった.これは特に目標とする肛門胆管癌や肛門部に進展する胆嚢癌症例で問題となったため,肝円索の静脈(臍静脈)を再開通させ,同血管から肝門部門脈にaccessすることを新たに考案し,肝門部門脈および病変のより鮮明な抽出・正確な診断を可能とした.また,術前の大静脈造影検査時に大腿静脈から挿入することにより肛門部病変,特に尾状葉から腎門部に到る病変の観察にも有効性を発揮した. (2)観察病変とその評価:当科にて経験される肛門部を主座とする悪性病変および膵頭部癌は非常に進行したものが多く、必ずしも血管内超音波検査のみで手術適応の是非を決定できるものではない.しかし,大血管侵襲の有無はより正確に診断可能であり,今後切除を目標とした手術手技・approachの仕方などにいくつかの示唆に富む知見が与えられた.切除例で非常に有効性が認められた例では,a)CT・下大静脈造影にて確信の得られなかった下大静脈原発の平滑筋肉腫にて,血管内超音波検査により術前に血管浸潤の程度と範囲が診断し得た例,b)肝十二指腸靱帯全域に及ぶ病変に対し,門脈浸潤を否定することによりHPDを施行し得た胆嚢癌症例,c)CT・ERCPにて確信できなかった膵癌をその血管浸潤から診断できた例などが挙げられる.今後残された研究期間では成績についてより詳細なreportをする予定である.
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