研究概要 |
1)H2-blockerの投与期間別にみた発生率の違い 生後5カ月未満齢のマストミスにH2blockerであるFamotidineを一日量 40mg/Kgの割合で飲水させた。マストミスを6群に分け(3、5、6、8、10、12カ月間投与)各投与期間終了時の、一匹当たりのカルチノイド発生数をみた。各々の平均発生数は0、0.2、8.6、3.1、5.0、10.6個でコントロールに比しいずれも高値を示した。かつ、投与期間の長さに比例して発生数が増加した。 2)H2-blocker投与によるinitiationの有無を見る実験 生後5ケ月齢のマストミスにFamotidineを2、4、6カ月投与し、以後生後17カ月まで水道水を投与して、発生率をみた。その結果各々の発生率は一匹当り平均1.5、3.2、4.18個でコントロールは0.4個であった。コントロールとの対比では、6カ月投与群で差を生じた。このことから、マストミスに対するFamotidineの作用には、initiation作用は無いものと解された。 3)迷走神経切除マストミスのカルチノイド発生に及ぼす影響 マストミスに迷走神経切除術(幹迷切)を加えコントロール群と比較した。一匹当たりの発生数は前者が0.43個,後者が0.05個と有意差はなかったが迷切群において発生が高まる傾向をみた。 4)顎下腺切除による発生の差 顎下腺切除、無処置、顎切+phamotidine投与の3群での比較では顎切の影響は無かった。しかし、phamotidine単独投与群と顎切+phamotidineとの比較で、後者に発生の抑制傾向が見られた。 5)可移植マストミスカルチノイドに対するEGF,ペンタガストリンの影響 ヌードマウスに移植されたカルチノイドでは両者の増殖作用は認められなかった。 現時点の結論は以下の如くである。 マストミス胃カルチノイド発生においてH2-blockerは発生のプロモーション作用はあるが、initiation作用はない。迷切はおそらく血中ガストリン値を高めるために、発生を促進させると思われる。顎切は、発生に対して抑制的に働く。これはEGFの欠落による粘膜再生抑制が惹起されることに関係していると思われる。マストミス胃カルチノイドはガストリン、EGFによって増殖されない。
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