遠心分離の操作にてFCIC《解凍後の培養で形成したいわゆる“pseudoislet"(分散ラ島細胞の凍結-解凍後の“pseudoislet")》よりハンクス液を除くことで、移植時に腎被膜のより少ない剥離スペースに、FCICの被膜外への漏出をみることなく、確実な移植が可能であった。同種同系移植では、移植後1日目に血糖値の正常化を認め、また移植前にみられた多尿142.2±12.8ml/日も移植後1日目には42.0±14.8ml/日と改善した。移植8日目に左腎摘出を行い検討すると、血糖値の有意な再上昇を確認した。そこで、摘出した腎の組織切片を作製し、移植されたFCICを免疫組織化学染色を施し検索すると、腎被膜下にインスリンに染まる多数のviableな細胞集塊を認めた。 同種異系移植(Fischer系→Lewis系は組織学的非適合性は弱い間での移植である)での生着日数は、移植翌日から毎日の空腹時血糖値の検索で、血糖値200mg/dl以上の値となった日までの日数とした。FCIC移植群の平均生着日数は12.5±5.0日であり、対照としたCI移植群の3.8±1.0日に比し有意な生着期間の延長が得られた。 FCIC移植群で、血糖値が200mg/dl以上となった時点で腎を摘出し、その組織切片を作製して移植されたFCICを検索すると、FCICの移植部位には多数のリンパ球及び単球が浸潤し、ラ島細胞の破壊が認められた。これらはラ島の同種異系移植あるいは異種移植の際の拒絶反応と一致する所見である。
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