前年度に続いて臨床検体を材料として、m-RNAレベルでのサイクリン遺伝子と癌との関連を検討した。材料は4種類の癌細胞株と14例の肝細胞癌症例(内、4例は多発肝細胞癌)で、それぞれの癌部および非癌部よりRNAを抽出し、RT-PCR法をもちいて各サイクリン遺伝子の発現を検討した。なお、比較するコントロールとしてはβ-アクチンを用いて検討した。 4種類の癌細胞株では、サイクリンA・B・D遺伝子すべての発現増加を認めた。 次に肝細胞癌症例14例では、サイクリンA遺伝子の発現は、10例において癌部では非癌部に比べて発現の増加を認めた。また、他の4例はともに発現を認めないか、または癌部・非癌部ともに同程度の発現であった。サイクリンB遺伝子に関しては、4例において癌部では非癌部に比べて発現の増加を認めたが、サイクリンAほど明らかな発現増加ではなかった。さらにサイクリンDにおいては、癌部と非癌部を比べても明らかな差はなく、むしろ癌部と非癌部ともに恒常的に発現されており、肝細胞癌症例では一定の傾向を認めなかった。 次に蛋白レベルでの発現様式を検討するためにWesternblot法を行ったが、サイクリンのような核蛋白を臨床検体から抽出することが困難なためか、いまだ一定の結果を得ていない。 以上より、サイクリンA遺伝子は肝細胞癌の増殖に関与しておりその指標となると考えられた。
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