研究概要 |
1)肝局所免疫能賦活による原発性肝癌の経類洞性進展及び肝転移の抑制。BRMとくにOK432が肝の局所免疫能を高めることを示唆するdataを得た。即ちOK432は高率に肝とくに肝内マクロファージ(クッパー細胞)に集積し、かつTNFα、IL-1α、IL1-βといった抗腫瘍能を有するモノカインのmRNA発現を増強した。とくに静脈内投与後1〜3時間で強い発現を示した。更には、肝マクロファージのIL_2リセプターの発現をも増強した。これらは、新しい知見である。 以上の結果は、我々が以前に発表した(Cancer Immuno Immunother.35:75,1992)結果-OK432が肝内マクロファージの抗腫瘍能を高める-に理論的根拠を与えるものである。 2)エンドトキシン誘発肝障害発生機序の解明と新しい治療法の開発。本症の発生機序には肝マクロファージの活性化→TNFαを主体とするモノカイン及びトロンボキサンA_2(TXA_2)-TXA_2受容体系の活性化→類洞内皮障害、接着分子発現増強、類洞収縮→類洞内凝固、白血球接着亢進、血小板凝集→類洞微小循環障害→肝実質障害が大きく関与していることを明らかにしている。そして、各段階における合理的な治療法を開発し、実験レベルではあるが、効果を得ている。 3)肝冷保存・再潅流障害の発生機序の解析とその対策。今回得られた知見は、(1)冷保存中に肝マクロファージが活性化すること(2)類洞内皮細胞上の接着分子ICAM-1の発現が亢進すること(3)類洞内非常のTXA_2受容体がinternalizeすること(4)Caチェンネルブロッカーが冷保存・再潅流時の類洞圧上昇を抑えること等である。いづれも肝移植に際する肝冷保存にとって有益な知見であり、臨床応用が期待される。
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