研究概要 |
1.大腸正常粘膜,癌組織,転移部位におけるp-glycoprotein(pgp)の発現を抗ヒトMDR1遺伝子産物(JSB-1)を用いた免疫組織染色法,Western blot法にて検討した.67例,145病変(正常大腸粘膜67,大腸癌66,腺腫5,転移リンパ節5,肝転移病巣2)を対象とした.正常大腸粘膜,腺腫の全例にpgpの発現を認めた.癌65病変では高分化型46.%,中分化型14.3%,低分化型0%と分化度が低くなるほどpgpの発現率は低下し,転移リンパ節,肝転移病巣病変ではpgpの発現は認められなかった.癌の進行度とpgp発現の間に相関はみられなかった.Western blot法を用いて大腸癌23病変におけるpgpと,各種蛋白発現(c-erbB-2,p53,PCNA)の関連性を検討し,pgpと各種蛋白発現の間に関連性は認められなかった.本研究で,大腸正常粘膜で発現しているpgpは細胞の癌化や低分化への分化の過程で失われ,転移組織においてもpgpの発現は認められないと考えられた.以上の結果は,1)池口正英 他:大腸癌におけるWestern blot法を用いたP-glycoprotein発現に関する検討.消化器癌の発生と進展 6:277-281,1994.2)M Ikeguchi,et al. : Expression of P-glycoprotein in the normal colorectal epithelium and in colorectal carcinoma. International Journal of Oncology 7 : 319-324,1995.に報告した.2.胃癌培養細胞株であるHSC-39(印環細胞癌),MKN-28(中分化型腺癌)にアドリアマイシンによるアポトーシス誘導実験を行い,高分化型であるMKN-28はHSC-39に比べてアポトーシスが誘導されにくいという結果を得た.この事実より,MKN-28,HSC-39においてpgpの発現がアポトーシス誘導とどの様に関わっているかを検討したが,MKN-28はHSC-39ともにpgpの発現は認められず,制癌剤による培養細胞へのアポトーシス誘導にpgpが関与している可能性は低いと考えられた.
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