肝細胞癌切除後肝再発予防を目的とした新しい免疫療法の確立

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05671066
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 岡 正朗 山口大学, 医学部, 助教授 (70144946)
• 研究分担者: 硲 彰一 山口大学, 医学部, 助手 (50253159) ; 鈴木 敞 山口大学, 医学部, 教授 (20026834)
• キーワード: 肝細胞癌 / 肝切除 / 肝再生 / IL-2 / 肝動注 / リンパ球サブセット / 免疫組織染色

研究概要

基礎研究:呑竜ラットを使用し、Higgins-Andersonの方法にて約70%の肝切除を施行、無拘束下に4.5万JRUのinterleukin-2(IL-2)門脈内持続投与を6日間行い、生食投与群と肝再生の面から比較検討した。血中のAlbumin、GTP、GOT、alkaline phosphataseを比較したところ、両群間に差を認めなかった。BrdUの取り込みはIL-2投与群において、投与開始後2日目で有意に低下しており、IL-2投与により肝再生が障害される可能性が示唆された。一方、肝湿重量の比較では両群間に差を認めず、現在、組織学的検討を行っている。また、IL-2投与群に死亡例は認めていない。
臨床的検討:肝細胞癌肝切除例を対象に、術後seldinger法により肝動注用カテーテルを肝動脈内に留置し、皮下埋め込み式ポートに接続、肝動注免疫療法を施行した。肝動注免疫療法は、recombinant IL-2を持続肝動注(80万JRU/day、6days/W、4W)を中心に、OK-432の肝動注(5KE/2W X2)と筋注(5KE X 3/W)、ADR(10mg)とCy(300mg)を2週に1回、さらにFamotidine(40mg/day、経口)よりなっている。現在、5例に施行したが、全例重篤な副作用もなく完遂した。末梢血のリンパ球サブセットの解析では、natural killer(NK)細胞の比率が増加しており、NK活性も有意に増強された。今後、血中サイトカインの解析も行う予定である。また、術前投与例の検討では、肝動注免疫療法により明らかに癌周囲の細胞浸潤が増強され、その主体がcytotoxic T-cellであることを免疫組織染色により確認した。今後、再発率の検討および癌局所の免疫組織染色により本療法の作用機序について検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Masaaki,Oka: "Intraarterial combined immunochemotherapy for unresectable hepatocellular carcinoma:Preliminary results" Cancer Immunology Immunotherapy. (In press). (1994)
• [文献書誌] Masaaki,Oka: "The depression of cytotoxicity of nonparenchymal cells in the liver" Surgery. (In press). (1994)
• [文献書誌] Masaaki,Oka: "Prostaglandin E2 levels and lymphocyte subsets in portal venous drainage of colorectal cancers" American J Surgery. (In press). (1993)
• [文献書誌] Masaaki,Oka: "Adoptive immunotherapy for unresectable or recurrent pancreatic cancer using lymphokine-activated killer cells or cytotoxic T-cells" J.Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery. 2. 163-167 (1994)
• [文献書誌] Masaaki,Oka: "Interleukin-6 and Granulocytic Elastase Levels Following Laparoscopic Cholecystectomy" J.Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery. (In press). (1994)
• [文献書誌] Masaaki,Oka: "Change of lymphocyte subsets following various surgical stress" Bulletin Yamaguchi Med.School. 40. 29-35 (1993)