研究概要 |
閉塞性黄疸患者13例に経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を施行し、施行前および施行後1、3、5、7、14日目に血清とPTBDチューブよりの胆汁を採取した。胆汁中胆汁酸排泄量はPTBD翌日には正常値の約3倍と高値を呈し、3日目に最低となった。13例中7例では胆汁酸排泄量はその後次第に増加し、14日目には正常値の約2.8倍となったが、他の6例では殆ど増加がみられず14日目においても正常下限に留まった。血清7AHC濃度はPTCD前には92±12pmo1/m1(Mean±SEM)と正常値(226±26pmo1/m1)の半分以下であったが、先の7例では3日目より著明な増加が認められ、他の6例では殆ど増加が認められなかった。胆汁中胆汁酸排泄量と血清7AHC濃度との間には、強い正の相関が認められ、血清7AHC濃度は肝における胆汁酸合成量を反映することが示された。 この結果をもとに血清7AHCのPTBD後の挙動と、術前の肝予備能および術後合併症の頻度の指標であるビリルビン減少率(b値)との相関を検討した。新たな閉塞性黄疸患者15例にPTBDを施行し、施行前および施行後1,3,5,7,14日目に血液を採取し、血清7AHCとビリルビンを測定した。血清7AHCが7日目までに急激に増加し、正常値(238±100pmo1/m1,Mean±SD)を越えるものをResponder(R群6例)、越えないものをNonresponder(N群9例)と分けると、14日目の血清7AHCはR群では525±83pmo1/m1、N群では145±86と著明な有意差が認められた。減黄率b値はR群では-0.234±0.152、N群では-0.057±0.067(P<0.05)と、R群はN群に比べ有意に減黄良好であった。血清7AHCとb値の間には有意な負の相関が認められた。以上の2つの研究により、閉塞性黄疸患者の減黄術前後における血清7AHC濃度の変動は、肝における胆汁酸合成量の回復を鋭敏に反映し、手術時期の決定や肝予備能の評価のための新しい検査法として有用であることが証明された。
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