研究概要 |
隆起型大腸癌23病変および表面型早期癌22病変を対象としてKi-RAS codon 12のpoint mutationをdigoxigeninを用いたnon-RI dot blot hybridization法で検索したところ,隆起型早期癌では10/23(43%)にpoint mutationを認め,表面型早期癌では2/10(10%)にのみpoint mutationを認め,両者の間に有意差を認めた。以上のことより,隆起型早期癌と表面型早期癌は発癌の過程が異なることが示唆された。 隆起型早期癌でKi-RAS point mutationが認められた10例中6例においては腺腫部分と癌部分に同じタイプのpoint mutationが認められたが,2病変においては癌部分にのみpoint mutationが認められ腺腫部分には認められなかった。更に,残りの2病変においては腺腫部分にpoint mutationが認められたにもかかわらず癌部分にpoint mutationが認められず,これら2病変においてはKi-RAS point mutationの結果からはadenoma-carcinoma sequenceと一見矛盾するような結果であった。このため,この2病変に関してはpUC118 vectorを用いてsubcloningを行った。その結果腺腫部分では10%,23%のコロニーにpoint mutationが認められた癌部分ではpoint mutationを示したコロニーは認められず,上記の結果が正しいことが確認された。 p53の染色性に関しては,隆起型早期癌で5/20(25%)陽性,表面型早期癌では8/23(35%)陽性であり,両者間には差を認めなかった。 以上より,Ki-RAS point mutationの結果からは隆起型と表面型との間で異なった発癌の経路が存在する可能性が示唆され,また,腺腫内癌の形をとる隆起型病変であっても必ずしもadenoma-carcinoma sequenceに合致するKi-RAS point mutationの結果を示すものではないことが明らかとなった。
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