研究概要 |
癌の増殖と悪性化に対する活性酸素の役割を大腸癌50症例を用いて臨床的に検討した(本研究の要旨は第93回 日本外科学会総会,第11回アジア太平洋癌会議・バンコクにて報告した)。 方法:切除標本の【.encircled1.】癌部【.encircled2.】癌隣接部【.encircled3.】正常部の3点の組織内SOD(superoxide dismutase)活性,TBA(脂質過酸化)反応物質を測定し、病理組織学的因子および癌部の核DNA量と比較した。 成績:癌部のSOD活性は症例により差があるが、stageの進んだものほど高値であった。また同一の標本では癌部が、癌隣接部や正常部に比べ高い傾向を示した。 癌部では壁深達度が進むと高くなる傾向を示し、癌隣接部ではsm,pmで最も高く、深くなるほど減少した。TBA反応物質は癌部では深達度で変化がなく、癌隣接部ではsm,pm癌で最も高く、深くなるほど減少した。SOD活性,TBA反応物質とも肝転移,リンパ節転移の有無で差がなかった。しかし、静脈侵潤・陽性群のSOD活性が陰性群に比べ有意に高い値を示した。癌の大きさによる差はなかった。核DNA量については、SOD活性が増加するとaneuploid dpatternを示すものがdiploid patternより多くなった。 ploriferation indexはSOD活性が低下するほど高くなる傾向を示した。 まとめ:非癌部に比べ癌部のSOD活性が高いことは、活性酸素の作用に期待する癌の治療(放射線,化学療法など)に対して、耐性が強いことを示唆している。早期の癌で隣接部のSOD活性とTBA反応物質の値が最も高いことは、癌の侵潤に対する抵抗と消去しきれなかった活性酸素による障害(癌の侵潤能を表す?)の強さが最も強い時期であることを示している。平均して正常部は癌部よりSOD活性が弱く、治療にあたってはSOD活性を高めるなどの保護が必要であると考えられた。
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