研究概要 |
大腸癌と組織内活性酵素の関係をSODの局在と組織SOD活性,病理組織学的パラメーターおよび生物学的悪性度と比較することで検討した(本研究の要旨は第94回日本外科学会総会で報告した)。 方法:大腸癌55例についてCu,Zn-SODのモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的染色を行い、癌組織および正常組織における染色性と局在を検討した。これらを染色の程度により、癌部が隣接する非癌部より強いか同等の染色性であるものをA群,弱いものをB群とした。この2群について組織SOD活性,TBA反応物質,病理組織学的パラメーター(リンパ管侵潤,静脈侵潤,Grade,深達度)や核DNA量(ploidy pattern,proliferation index)などと比較検討した。 成績:A群は全体の58%を占めた。A群のSOD活性値はB群より高く、両群間に有意の差を認めた。A群のTBA反応物質はB群の値よりも低かった。Proliferation indexはB群がA群より高い値を示したが、両群間で有意の差はなかった。そしてPloidy patternはA群とB群のaneuploidとdiploidの比は等しく、両群間で差を認めなかった。病理組織学的比較では腫瘍の深達度において両群間の数に有意の差を認めた。そしてA群とB群の比と深達度との間には負の相関関係を認めた。しかしリンパ管侵潤や静脈侵潤では両群間に差がなかった。 まとめ:癌部のSODの局在は必ずしも組織SOD活性と連動せずまた生物学的悪性度をも反映しない。しかしながら癌部,非癌部のSOD活性の測定は活性酵素により治療効果を発揮する抗癌剤の感受性や放射線治療の効果を予測するパラメーターとしてだけでなく、治療によってもたらされる正常組織の損傷を治療前に知るうえでも有用である。
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