研究概要 |
1.ハイブリット型人工食道の開発のために、正常ヒト食道上皮細胞を用いて以下の実験を行った。 (1)Polyglycolic Acid(PGA)meshを包埋したtypeIコラーゲンゲル上で食道癌新鮮切除標本から採取したヒト食道上皮細胞を培養し。in vitro で、PGA meshを縫合した内腔が上皮細胞で裏打ちされた管腔を作製することができた。 (2)(1)で作製した管腔をヌードラット広背筋弁へ移植して人工食道を再構築した。20日後に摘出して組織学的に検討すると、内腔は全周性に重層化した上皮細胞で被覆され、管腔構造は保持されていた。 2.人工食道内腔の上皮細胞重層化促進のために、ヒト線維芽細胞を導入して以下の実験を行った。 type Iコラーゲン2mlにヒト真皮由来の線維芽細胞(三光純薬)0、8、16×10^5個を包埋したコラーゲンシート上で食道上皮細胞を培養した。線維芽細胞非包埋コラーゲンシート上での上皮細胞は、培養14日目で2〜3層に重層化したが、培養21日目では発育に変化を認めなかった。8×10^5個包埋シート上では、培養14,21日目で3〜4層,4〜5層に重層化した。16×10^5個包埋シートでは、培養14,21日目で10層,17〜18層に重層化し、さらに細胞の形態は基底層から上方に向かい扁平化を呈し分化傾向を認めた。つまり、包埋する線維芽細胞数が多いほど上皮細胞の重層化は促進されることが明らかになった。 3.2で作製した線維芽細胞8×10^5個包埋ヒト食道上皮細胞シートをヌードラット腹直筋へ移植した実験においては、移植後22日目の組織像で、上皮細胞は10層以上の重層化を示し、コラーゲン層には新生血管を認め、炎症性細胞浸潤も軽度で、生体への生着は可能であった。
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