下部直腸癌、肛門癌術後または鎖肛、交通外傷等により肛門括約筋機能の廃絶した患者にたいして肛門括約筋欠損部に本来の機能を有した肛門再建を目的として、常に一定の緊張を保ち、疲労することのない肛門括約筋の特性を得るため、易疲労性の骨格筋に持続電気刺激を加えることにより耐疲労性の筋肉に変換させ、さらにこの筋肉を会陰部欠損部に自家移植し本来の機能を有する肛門括約筋を再建する手技の確立のために実験を行い、下記の結果が得られた。 1.家兎の骨格筋である薄筋の有茎筋弁の支配神経に、5Hzおよび10Hzで4、6、8週間持続電気刺激をあたえると、10Hz、6週間の持続刺激条件が最も有効に収縮の遅い耐疲労性の筋肉に変換されることが、張力計を用いた筋力検査および筋肉の組織学的検査にても確認された。 2.家兎の直腸を肛門括約筋を含めて切除し、耐疲労性の確立された刺激電極縫着下有茎薄筋弁を直腸に巻き付け、筋肉末端部を坐骨結節に固定することにより肛門が形成された。なお刺激電極への導線は皮下を通して背部より導出し小型電気刺激装置に接続し、間欠的に電気刺激をあたえ、圧センサーにより肛門内圧を測定すると、非刺激時内圧と比較して20Hz刺激での肛門最大内圧は90.0±27.3cmH_2Oの有効な肛門内圧の上昇を示し、内圧曲線の最大内圧時の振幅も11.0±7%と便を維持するために十分有効な機能が得られ、有茎薄筋弁による肛門再建の可能性が示された。
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