研究概要 |
肝硬変ラットで肝細胞成長因子(HGF)の肝再生への効果を検討してきたが、有意な効果は得られなかった。HGFが肝細胞に作用する際、グルカゴンがco-mit-ogenとして働くという報告に注目して、HGFとグルカゴンのラット肝再生に及ぼす効果と糖代謝異常下の肝再生を検討した。 1.HGFとグルカゴンのラット肝再生に及ぼす効果:体重250〜300gのWistar系雄性ラットに対してHiggins and Andersonの方法に準じて70%肝切除を行い、肝切除のみを施行した群(A群)、肝切除後グルカゴンを皮下投与した群(B群)、肝切除後HGFを門脈内投与した群(C群)、肝切除後グルカゴンの皮下投与とHGFの門脈内内投与を併用した群(D群)の4群に分け肝再生能を検討した。グルカゴンは0.1mg/kgの量を肝切除直後から12時間間隔で4回投与した。HGFの門脈内投与は、肝切除6時間後に再開腹し腸間膜静脈内に4μg/kgのHGFを直接注入することによって行った。肝再生能の指標として残肝DNA含量およびproliferating cell nuclear antign (PCNA)陽性細胞率を測定した。B群ではA群と比較し肝切除48時間後の全肝当たりのDNA含量は有意に増加していた(12.04±3.25(mean±SD)mg vs8.26±1.68mg,p<0.05)。PCNA陽性細胞率は両群間に有意差を認めなかった。しかしDNA含量はA群とC群の間に有意差はなく、B群とD群の間にも有意差は認められず、今回使用した量のHGFでは肝再生促進作用、グルカゴンとの協調作用は証明できなかった。 2.糖代謝異常下、ラット肝再生に及ぼすグルカゴンの効果:Streptozotocin 60mg/kgを尾静脈から投与し、ラット膵におけるβ細胞を選択的に破壊した。このラットに対して、70%肝切除を行いグルカゴン皮下投与の肝再生に及ぼす効果を検討した。グルカゴンを皮下投与した全肝当たりのDNA含量は10.11±1.65mgであり、投与しなかった群の6.33±0.94mg(P<0.01)に比べて有意に高かった。
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