研究課題
癌の浸潤や転移・再発の機序を解明するため我々は接着因子に着目して検討している。平成2〜4年度には大腸癌症例で血清および組織ラミニンが癌の進行度とよく相関し、肝転移予知に有用であることを研究結果より報告した。今年度は接着因子としてラミニン、インテグリン、NCAM、CEAを大腸癌において検討した。1.ラミニン:ラミニンについては血清高値で肝転移危険群と考えられた症例で術後3〜4年の間に異時性肝転移を来したものは96例中3例であり、再発・転移例合わせると10例になる。組織染色の結果と組み合せて評価するとより相関の度合が増し、さらに症例の集積と予後の経過観察を詳細に行い、新しいELISA法による測定での検討を進めている。2.インテグリン:血中インテグリン測定は大腸癌症例の術前血清中β1インテグリンを定量し、正常コントロール群180ng/ml(平均)に比し、患者群310ng/ml(平均)と高値であり、cut off値の設定やその意義について検討している。組織インテグリン染色はVLA6について、その染色性やラミニン染色との対比などを行っている。3.NCAM:神経接着因子(NCAM)は直腸癌症例で、NCAM発現のある神経浸潤陽性例では局所再発が多い傾向をretrospective studyによる検討で認めた。今後は肝転移との関係や血清NCAM定量について進めていく予定である。4.CEA:胆汁中CEA測定では非肝転移群4.0ng/ml(平均)に比し、肝転移群30.2ng/ml(平均)と高値であり、血清CEA値や組織染色との関連を検討している。
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