研究概要 |
大腸癌の基底膜lamininを用いて免疫染色を行うことにより、基底膜形成癌が高率に肝転移する事を明らかにした。また基底膜染色を用いて肝転移再発を予測するprospective studyを行い、2年以上経過症例230例で、sensitivity:75.6%,specificity:85.7%,acurracy:83.9%,negative predictivevalue:94.2%と良好な結果であった。このことから基底膜形成の有無で従来のどの病理学的諸因子よりも高率に肝転移再発が予測できることを証明した。これらの知見は第41回日本消化器外科学会のシンポジウム及び第38回大腸癌研究会のパネルディスカッションで発表し、消化器外科学会誌(第26巻2488-2493:1993)に投稿した。 また大腸癌の初代培養をコラーゲンゲルを用いて3次元的に行うことにより、大腸癌の基底膜形成は癌細胞自身の性質であり、初代培養細胞の基底膜形成能は、原発巣の癌の性質をよく反映していることを証明した。そこで今後コラーゲンゲルを用いた株化細胞の検討を行うことで、in vitroでのモデルとなることが明らかになった。これらの知見を第93回日本外科学会総会及び第48回日本大腸肛門病学会総会で発表し、日本外科学会雑誌(第94巻873:1993)・臨床雑誌外科(第55巻1104-1110:1993)に投稿した。 さらに肝転移再発と強い関係のある基底膜形成癌の中でも基底膜形態により甲型68.3%と乙型31.7%に分類するとができ、基底膜形成のない癌での肝転移率が8%であったのに対して、乙型基底膜形成癌には40%に同時性・異時性肝転移がみられ、甲型基底膜形成癌では84%にも達していた。すなわち基底膜形成の形態に注目すれば更にprospective studyの精度を高めることができると考えられた。これらの知見は第31回癌治療学会総会パネルディスカッション及び第52回日本癌学会総会で口演発表した。
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