研究課題/領域番号 |
05671101
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
白水 和雄 久留米大学, 医学部, 講師 (20216203)
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研究分担者 |
笹富 輝男 久留米大学, 医学部, 助手 (20196190)
荒木 靖三 久留米大学, 医学部, 助手 (10184277)
諸富 立寿 久留米大学, 医学部, 助手 (80166462)
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キーワード | 神経周囲侵襲 / 神経接着分子 / 自律神経温存手術 / 直腸癌 / 癌抑制遺伝子 |
研究概要 |
平成6年度の研究計画に基づいて、術前に直腸癌の生検組織を採取し凍結切片を作製した。この凍結切片について抗NCAM抗体を用いて、ABC法による免疫組織染色を行いNCAMの存在を検索した。またNCAMと相同性があると言われている癌抑制遺伝子DCCについても検討を加えた。同一症例における手術後の切除標本における神経周囲侵襲とNCAMおよびDCCとの関連性を検討した。しかし、症例の集積が目標よりも少なかったので、神経周囲侵襲を含めたその他の病理組織学的諸因子とNCAMとの関連性については、過去の症例(ホルマリン固定切除標本)を追加し検討を行った。また、予後については追跡期間が長い過去の症例が適当と考え、これらの症例についてのみ検討した。以上より次のような結果が得られた。(1)NCAM陽性例はホルマリン固定切除標本では47例、15.5%に認められた。(2)病理学的予後規定因子のなかでNCAMと統計学的に相関が認められたのは神経周囲侵襲、静脈侵襲、リンパ管侵襲、肝転移、深達度、組織型、リンパ節型、リンパ節転移、炎症細胞湿潤で、多変量解析の結果、神経周囲侵襲が最も関連性が深かった。(3)治癒切除例の再発や生存率は、Dukes c症例では、NCAM陽性例の局所再発率が高い傾向が認められ、また、10年生存率は陰性例に比べて有意に低かった。(4)術前生検材料におけるNCAMやDCCの発現は、切除標本における発現とほぼ一致し、神経周囲侵襲と極めて有意な関連性が認められた。当初の目的であった症例数には及ばなかったが、過去の症例を検討の対象に追加することによって、次のような結論を導くことができた。神経接着分子(NCAM)は予後因子として重要であった。NCAMやDCCは神経周囲侵襲のマーカーとなる可能性が示唆された。つまり、術前生検材料におけるNCAMやDCCの発現生は、自律神経温存術の適応を決定するための良い指標となることが判明した。
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