研究概要 |
1.ラット実験腸発癌モデルの確立 発癌剤として、DMHとMNUの比較実験を行ない、DMHでは、十二指腸・小腸・大腸と広範に腺腫・腺癌の発生を認め、MNUでは、大腸に局在性の腫瘍発生を認めた。 2.大腸粘膜・腫瘍組織の増殖活性能の評価 上記実験1.において、Ornithine Decarboxylase(ODC)活性を測定した。腫瘍組織のODC活性は正常粘膜に比し有意に高値を呈し、悪性度に一致して高い傾向を示した。担癌ラットの正常粘膜ODC活性は、非担癌ラットに比べ有意に増加し、腫瘍の数が多い程非腫瘍部ODC活性は高い傾向であった。 3.農薬の消化管に及ぼす発癌プロモーター作用の検討(ラット使用) 3-1.2,4-Phenoxy acetic acid(2,4-PA) DMH単独投与群とDMH・2,4-PA併用群間に腫瘍発生頻度の差を認めず、病理組織学的にも消化管に対する発癌プロモーター作用を示唆する所見は得られなかった。 3-2.Captan Captan単独投与では腫瘍発生を認めなかった。DMH+Captan併用群ではDMH単独投与群に比べ、十二指腸・大腸で腫瘍発生頻度の上昇を認めたが、有意差はなかった。病理組織学的に腫瘍悪性度は両群間に有意な差はなかった。但しDMHとCaptanの合併投与群では腹腔内のリンパ節転移および肝腫瘍を認めた。Bromodeoxyuridine標識率については両群間に有意差はなかった。 4.大腸発癌高リスク患者へのChemoprevention効果の検討 大腸ポリポ-シス患者に対して、Prostaglandin合成阻害剤の直腸ポリーブ抑制効果について検討し、その有効性を確認した。但し、ポリーブ抑制効果と上皮細胞増殖活性の間に関連性を認めず、この作用が発癌性に対してchemopreventiveであるか否かについては、不明であった。 5.大腸発癌危険粘膜の基礎病理学的検討 潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患は、大腸発癌への高危険粘膜を有するといわれている。その基礎病理学的検討の一環として、ラット慢性腸炎モデルを用いた形態、生化学的検索を行った。腸炎モデルの治癒過程に出現する多潜能細胞としての線維芽細胞と、それらが産生・放出するフィブロネクチンの組織再構築への関与について明らかにした。
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