研究概要 |
生体環境において細胞増殖因子が人工血管内皮化に及ぼす影響を検討する事が、本研究の目的である。このためダクロン人工血管に白血球や血小板などの血液細胞をあらかじめ粘着処理する方法を検討したが、ダクロン人工血管のクリンプや細胞粘着の均一性や安定性に問題があった。このため血液接触面が平滑なゴアテックス人工血管を選択し、また細胞を表面に安定に粘着あるいは固定する方法としてキトサンのキセロゲルを利用する可能性を検討した。内径6mmのゴアテックス人工血管を100%エタノールに浸積して脱気してから、1%キトサン・2%酢酸溶液中に入れて一夜放置する。これを取り出して余分なキトサン溶液を除いて-80度の低温で凍結させる。これにメタノール中に溶解したn-カプロン酸無水物を作用させてキトサン化合物のキセロゲルを作成した。この方法で人工血管内面の一部に15-20μmの小孔を有するキセロゲル面が形成されたが、人工血管内面全体を被うものではなかった。この原因として疎水性で小孔しか持たないゴアテックス人工血管壁に、粘性の高いキトサン溶液が十分に浸透できなかった事や,カプロン酸との化合物生成の際に脱落してしまう事が観察された。現在これらの問題点を解決するためにいくつかの方法を検討中である.抗血栓性で生体毒性のない物質で小孔を有するキセロゲル血液接触面をゴアテックス人工血管に作成し、移植前に白血球や血管内皮細胞を単独または増殖因子とともにこの小孔に固定し、動物に移植することで、血流による細胞の剥離が少なく増殖因子の効果が十分に検討できると考える.
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