胸部大動脈瘤(弓部大動脈瘤・胸腹部大動脈瘤)手術時の脳・脊髄保護法の確立が、これらの手術の成否の鍵を握ると考えられる。 この保護法確立のための基礎実験を行った。雑種成犬の頭部分離体外循環モデルと逆行性脳分離循環モデルを用いて、これらの補助手段施行時とその後の急性期経時的変化を、微小循環観察法で評価した。いずれの補助手段も、脳保護法施行時間が1時間以内の時にはその微小循環変化は認められなかった。脳虚血時間を延長しての、微小循環の変化・脳間質への水分の移行などの変化を観察する実験を継続中である。 一方、家兎腎動脈下腹部大動脈単純遮断モデルを用いて、脊髄虚血の軽減・防止に、高燐酸エネルギー化合物の細胞外への流出を防止する目的から、5'-nucleotidase inhibitorの使用を検討した。本酵素阻害薬の効果が、心臓の虚血時高燐酸エネルギー化合物の保持に有効であったことから、これを応用した。血流遮断前にこれを投与し、遮断後にも継続的に投与することにより、本モデルでの対麻痺発生頻度を低くすることが可能であった。これにアロプリノールを添加し、oxygen free radicalの発生とそれに伴う脳・神経障害の発生防止効果があるかどうかを現在検討している。
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