本年度は、新生児家兎摘出心への改良UW液による心筋保護効果に関する研究として、UW液の構成成分であるハイドロキシエチルスターチ(HES)を心筋保護液に加え、その効果を研究中である。I群St.Thomas液(ST2)単独、及びII群ST2+HES(50g/l)、III群ST2+HES(100gl)の3種類の心筋保護液を用いて実験した。新生児家兎より摘出した心臓をworking heart灌流装置に接続し、I群からIII群について、それぞれ心筋保護液の反復投与による、20℃、120分の虚血再灌流実験を行った。 2分間の平均心筋保護液注入量は、I群、II群、III群で(以下同順)それぞれ11.6±3.4、7.55±1.19、4.07±1.18で、HES濃度を上げるほど注入抵抗は増加する。水分含有率は、各群0.819±013、0.821±0.004、0.790±0.033であり、心筋浮腫抑制効果は、III群から強くなり、II群ではI群と差がない傾向が認められた。次に、大動脈流量の%回復率は、各群94.2±28.4、85.4±27.3、54.4±19.5で、I群、II群に比べ、III群で低下する傾向をみとめた。さらに心拍数の%回復率は、各群98.9±8.9、92.8±7.3、93.0±16.3で、収縮期動大動脈圧の%回復率は各群95.3±3.8、94.0±5.9、91.1±8.2、冠動脈流量の%回復率は、77.5±5.5、80.0±13.4、73.0±4.0となっており、各群で有意差は認められていない。 以上のことから、HESの添加量として、50g/l程度以下が適切である可能性が示唆されている。現在さらに実験中である。
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