研究概要 |
【目的】University of Wisconsin Solution(UW液)は、良好な臓器保存液として認められつつある。我々は,新生児期開心術中の心筋保護への応用の可能性を探るため、低カリウム型のUW液(以下LPUW液;K:16mM,Na:140mM,Ca:1.2mM)と、ほぼ従来型のUW液(以下HPUW液;K:125mM,Na:30mM,Ca:0.5mM)の心筋保護効果について、実験的検討を行った。 【方法】実験系として、新生仔家兎(生後3から6日)摘出心によるKrebs‐Henseleit bicarbonate bufferで灌流したIsolated working heart modelを用いた。心筋保護液として、(1)HPUW群:HPUW液、(2)LPUW群:LPUW液、(3)STS群:St,Thomas(No.2)液、(4)KH群:冷却灌流液(低温のみ)の4群に分け、それぞれ4℃、10mlを冠動脈注入することにより心停止さた。15℃、3時間の虚血ののち再灌流させ、血行動態(心停止前値に比較)の測定、灌流終了後心筋採取による心筋水分含量の測定を行った。 【結果】心筋保護液の注入時間は、HPUW群、LPUW群で、他のに群より長くなり、心停止までの時間は、KH群のみ有意に長かったが、他の3群には差がなかった。%大動脈流量はHPUW群73.2±9.5(m±SD)、LPUW群96.4±8.2、STS群92.0±6.2、KH群86.5±7.4とHPUW群は他の3群に比べて有意に低かったが、LPUW群はSTS群、KH群に比して、高い傾向を示した。 【結論】細胞内液型であるUW液は、心筋保護液として不適当であるが、これを低カリウムの細胞外液型の電解質組成にすることで、新生仔期開心術で従来の心筋保護液よりも良好な効果を得る可能性がある。
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