ホルター心電図により健常人の24時間の心拍数を記録し、心拍数の揺らぎの解析を行った。心拍変動の時系列曲線のパワースペクトルから、粗視化法により自律神経の影響によるハーモニックな成分と1/fのフラクタルな成分を分離し、自律神経活動の日内変動曲線を求めることが出来た。自律神経の日内変動曲線は神経遮断剤の効果を忠実に反映し、夜間は副交感神経機能が高く、昼間は交感神経機能が高く互いに拮抗していた。これらの結果は従来の知見と矛盾せず、自律神経機能の定量的評価法であると判断された。副交感神経と交感神経機能の間には対数スケールで逆相関の関係にあった。自律神経機能は絶えず変動し揺らいでおり、1/fの揺らぎが観察された。若年者は副交感神経機能が高く、加齢と共に交感神経機能が高くなっていた。これに対しホルター心電図から求めた排尿性失神の患者の自律神経機能の日内変動曲線は、健常人に認められた揺らぎは認められず、副交感神経の一日に2〜3回の突発的なピークが観察され、自律神経機能の異常によるものと推測された。脳死患者の心拍変動時系列曲線のパワースペクトルには、自律神経のハーモニックな成分は認められず、1/fのフラクタルな成分のみであった。このことから心拍変動からも脳幹機能を評価することも可能であると考えられた。
|